2011 Fiscal Year Annual Research Report
アブラナ科植物の自家不和合性における自己・非自己識別機構の分子基盤
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20678001
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
渡辺 正夫 東北大学, 大学院・生命科学研究科, 教授 (90240522)
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Keywords | アブラナ科植物 / 自家不和合性 / 花粉-柱頭相互作用 / 細胞内情報伝達 / 自家和合性変異系統 / 遺伝子マッピング / 遺伝子発現 / 分子マーカー |
Research Abstract |
シロイヌナズナの自家不和合性を確立したが、後代において、表現型の安定性が問題になっていた。その点については、自家不和合性を示す近縁野生種からプロモーターを単離し、利用することにより、QTL解析に耐え得る系統を確立することに成功した。実際に数系統のシロイヌナズナ系統との交配から、和合性因子の単離ができる可能性を見いだした。 和合受粉では花粉粒の接着、foot形成、吸水、発芽、花粉管伸長を経て受精に至るが、不和合受粉では柱頭表面の乳頭細胞において花粉の吸水・発芽・花粉管伸長が抑制され受精が起こらないと言われているが、多様な表現型が観察されている。表現型の違いについては、気象条件をはじめ様々な要因が推測されているが、その実態については明らかになっておらず、また関連因子についての解析もほとんど行われていない。そこで、Brassica rapa各Sホモ系統から開花前日の蕾を採集し、寒天培地上で開花させ、自家受粉および他家受粉させた。受粉後0分を起点とし、柱頭上での花粉の動態・挙動を実体顕微鏡下でタイムラプス観察した。受粉後0分から1分間隔で花粉の直径変化を測定した結果、自家受粉/他家受粉およびSホモ系統間で花粉の吸水速度・吸水率が異なることが明らかになった。また、自家受粉時の花粉発芽や吸水に注目して花粉動態を観察すると、6種類の代表的な表現型に分類でき、それらの割合はSホモ系統間で異なった。以上のことから、アブラナ科植物の自家不和合性反応は一様ではなく、花粉の吸水・脱水・発芽などが相互に関連し、必ずしも一方向的ではないことが明らかとなった。 これらにあわせて、国民への科学の普及のために、アウトリーチ活動を73件行い、講義の後に児童・生徒から返却された手紙、レポート、2,300通以上全てに、返事を書いて、小中高の教員から高い評価を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画した実験については、概ね実施することができたが、これまでに行ってきた研究について、論文発表については、現在審査中・投稿準備中という状況上にあることから、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
この4年間で、シロイヌナズナ、アブラナの自家不和合性の原因、原因遺伝子の単離に向けた解析を行い、和合性因子のQTL解析等から、原因遺伝子の単離の可能性を示した。また、シロイヌナズナの自家不和合性安定性の原因についても、プロモーターの改変などにより、可能であることを示した。こうしたことから、最後の1年で自家和合性原因の分子基盤構築が可能になると、判断した。 さらに、アウトリーチ活動についても、100件近く展開し、次年度以降も継続的に展開できるめどを立てた。
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Research Products
(122 results)