2009 Fiscal Year Annual Research Report
認識機構に着目した感染とがんに対する生体防御システムの分子機構の解明
Project/Area Number |
20679003
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
高岡 晃教 Hokkaido University, 遺伝子病制御研究所, 教授 (30323611)
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Keywords | パターン認識受容体 / DNA / 感染 / がん / 生体防御 |
Research Abstract |
昨年まで細胞質核酸刺激によって誘導される自然免疫応答の活性化経路を制御する新規分子の検索を行った結果、複数の候補分子を同定するに至った。本年度は、候補分子の1つであるSCI2という分子に着目して機能解析を遂行した。その結果、SCI2を様々なヒト由来の細胞に発現させることで、細胞質核酸刺激によるIFN-α/βの産生誘導が10倍以上に増強されることが明らかとなった。さらにRNA干渉によりSCI2の発現を抑制させると、細胞質核酸刺激によるI型IFN発現誘導が顕著に抑制された。同様なSCI2による影響が、IFN誘導のみならず、炎症性サイトカイン誘導でも確認された。よってSCI2は細胞質核酸刺激によって誘導される自然免疫応答の正の制御因子であることが明らかにされた。次にSCI2の作用メカニズムについてノックダウンの系により検討を進めた。SCI2をノックダウンした細胞では、I型IFN産生誘導に必須の転写因子であるIRF-3の転写活性が顕著に阻害され、またIRF-3の二量体化が抑制された。さらにNF-κBの活性化も抑制されることが示された。IRF及びNF-κBの両経路を制御する上流ステップに対する影響を調べたところ、核酸刺激依存性にRIG-Iと直接的に会合し、その結果RIG-IのATPase活性を促進させるための新しい制御因子であることが示唆された。さらにSCI2のインフルエンザ感染における効果を検討したところ、SCI2を発現させた細胞では、インフルエンザウイルス感染時のIFN-β誘導が顕著に増強され、上清中のウイルス価も数十分の1に抑制された。以上の結果は、近年、社会的に大きな問題となっているインフルエンザ感染のコントロールという観点からも、今回同定したSCI2という分子が治療標的として重要な役割を担っている可能性が示唆されると考えている。現在、研究結果について論文投稿準備中である。
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Research Products
(4 results)