2008 Fiscal Year Annual Research Report
大型類人猿における自己と他者の理解およびその相互連関に関する比較研究
Project/Area Number |
20680015
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Research Institution | Hayashibara Biochemical Laboratories, Inc. Great Ape. Research Institute |
Principal Investigator |
平田 聡 Hayashibara Biochemical Laboratories, Inc. Great Ape. Research Institute, 心理・行動学研究部, 研究員 (80396225)
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Keywords | 大型類人猿 / 自己認識 / 協力 |
Research Abstract |
遅延自己像の認知に関して類人猿研究センターのチンパンジーを対象とした実験研究をおこなった。チンパンジーの自己認識能力に時間軸がどのように関与しているのかについて調べる研究である。チンパンジーの顔周辺をビデオカメラで撮影し、(1)生の映像、(2)1秒/2秒/4秒の遅延時問をはさんだ映像、(3)違う時期に録画した自己像や他者像をそれぞれモニターに映し、チンパンジーの反応を記録した。5個体のチンパンジーのうち3個体では、遅延時間をはさんだ自己像に対しても自己認識の証拠が認められた。チンパンジーの自己理解が「今ここ」の世界だけでなく、少なくとも4秒程度の過去であれば時間を通して一貫したものであると解釈できる。また、アメリカ・アイオワ州の研究施設Great Ape Trust of Iowaにおいて同様の手法でオランウータンを対象とした研究を実施し、データの予備分析をおこなった。オランウータンにおいても、遅延時間の違いに応じて自己の映像に対する行動が異なっていることが明らかになった。さらに、アイトラッカーを用いた視線計測に関する研究手法を確立させ、予備実験としてチンパンジーの顔写真を見ている際の視線を計測した。チンパンジーにおける他者理解の基盤とも言える「他者を見る」行動に関して、その特徴を明らかにする実験研究である。その結果、チンパンジーが他者の顔写真を見る際にも、ヒトと同様に目の部分に特に注目していることが明らかとなった。他者の視線に対してチンパンジーも選択的に注意を払う性質があると考えられる。
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