2010 Fiscal Year Annual Research Report
運動時の高体温と中枢性疲労の相互連関における脳内神経伝達物質の関与
Project/Area Number |
20680033
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
長谷川 博 広島大学, 大学院・総合科学研究科, 准教授 (70314713)
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Keywords | 運動 / 体温調節 / 神経伝達物質 / 視床下部 |
Research Abstract |
本研究は様々な生理機能に重要な役割を果たしている神経伝達物質と体温上昇が促進され運動継続時間の減少などが惹起される温熱性疲労に着目し,脳内神経伝達物質が運動時の体温調節機構及び運動能力に及ぼす影響を検討したものである。昨年度までは安静及びトレッドミル運動時において,腹腔内温,尾部皮膚温,酸素摂取量,及び脳内神経伝達物質をテレメトリー法,脳内マイクロダイアリシス-HPLC法,及び代謝測定法を用いて,連続的かつ同時に測定するための実験環境を整備した。最終年度にあたる本年度は,環境温度条件を中立(23℃)及び暑熱(30℃)条件,運動条件を低・中・高強度の漸増負荷運動及び疲労困憊に至るまでのトレッドミル運動,脳部位を体温調節中枢である視索前野・前視床下部(PO/AH)及び記憶やストレスに関わる海馬領域に設定し運動実験を実施した。主な成果として,運動時の体温調節反応にはPO/AHへ投射するドーパミン及びノルアドレナリンのカテコールアミン作動性神経の活性が重要な役割を果たしていること,暑熱環境下の運動においてその重要性が顕著になること,暑熱環境下での運動は体温上昇を引き起こすとともに運動継続時間を減少させること,PO/AHに投射するセロトニン作動性神経の体温調節機構への関与は少ないこと,海馬及びPO/AHのセロトニン神経伝達は温熱性疲労を含む中枢性疲労の要因に関与しないことが明らかとなった。これらの成果は,運動生理学及び温熱生理学の研究分野に新たな知見を加えるものである。また,無麻酔・無拘束動物において,脳内神経伝達物質と生理的指標の測定を組み合わせた実験手法を確立させたことは,運動時や自由行動時の生理応答に関わる脳内神経機構の研究などに幅広く応用できる可能性を示した。
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Research Products
(9 results)