Research Abstract |
今年度は,過去に運動経験のない中高年者が,運動習慣を開始する要因について縦断的検討を行った. 対象は,国立長寿医療研究センター予防開発部の行う「老化に関する長期縦断疫学研究(NILS-LSA)」の第一次調査から第五次調査までのいずれかの調査に初めて参加した人(40-86歳)のうち,過去に運動経験のない男性150名,女性214名とした.運動習慣開始に関連する要因は,昨年までの分析で高齢期の運動習慣に関係すると考えられた項目について,Cox比例ハザードモデルを用いて検討した.各項目は,高血圧既往(有無),喫煙歴(有無),BMI(25未満/以上),教育年数(12年未満/以上),自覚的健康度(悪い・非常に悪い/普通,良い,非常に良い),抑うつ(Center for Epidemiologic Studies Deplession(CES-D)Scaleの日本語版:16点未満/以上),握力(男性32kg未満/以上,女性19kg未満/以上)であり,単要因ずつモデルに投入した. 1)追跡期間中に運動を開始した人の割合 平均追跡期間は,6.6年であった.初回調査時に運動習慣がなく追跡期間中に運動を開始した人は,男性26名(19.3%),女性49名(22.9%)であり,性差は認められなかった. 2)運動習慣の開始に関連する要因 運動習慣の開始と関連が認められたのは女性の握力のみであり,無調整ハザード比(95%信頼区間)は2.73(1.08-6.90)であった.年齢を調整したハザード比は,2.47(0.95-6.40)であった.男性ではいずれの要因も関連が認められなかった. 中高年期までに運動習慣のない女性において,握力が19kg以上の人はそれ未満の人より中高年期に運動を開始する割合が高かった.運動習慣に限らず,握力を維持できている女性では,中高年期からでも運動を始める可能性の高いことが示された.
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