2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20680038
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
日高 真吾 National Museum of Ethnology, 文化資源研究センター, 准教授 (40270772)
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Keywords | 鉄燈籠 / 民俗文化財 / 能登半島地震 / 被災文化財 / 保存 / 穴水町 / 中居鋳物 / 明泉寺燈籠 |
Research Abstract |
当該年度は主に研究対象としている「明泉寺燈籠」の基礎調査として、資料自体の歴史的背景の調査と資料の化学分析調査、設置機関の環境調査を行った。 歴史的背景の調査では明泉寺燈籠の製作年代と製作者を明らかにし、さらには「明泉寺燈籠」の製作地である石川県穴水町中居の鋳物業の歴史変遷について明らかにしていった。その結果、中居鋳物は室町時代には産業として確立していたことや「明泉寺燈篭」の製作者は中居の有力な家の出自であること、さらに中居では同地区の他家に修行に出ることで地域全体の技術の均一化を図っていたことが明らかになった。ただし、この点は新たな技術開発を阻害し、高岡など周辺の鋳物産地に市場が奪われていったことも知見として得られた。 化学分析調査では燈籠の鉄組成分析を行った結果、非常に湯あがりの良い鋳鉄が使われていたことやその成分を先行研究の事例と比較した結果、南蛮鉄の組成に近い数値が得られていたことが明らかになった。なお、これらの調査と合わせて実施したX線透過試験や倒壊試験等の結果から燈籠の支持体の基本設計を行うことができた。 その他、修復後の資料の保存環境を整えるための材料として、使用した防錆剤の効果試験や設置する資料館の紫外線量や温湿度のモニタリングや塩分濃度等の環境調査を実施した。その結果、防錆剤としては環境や作業者に安全な不乾性油(オリブ油)による処理法を選択することができた。また、環境調査については次年度も継続して行うことで年間のデータを整えて改めて考察を加えることとしている。
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Research Products
(5 results)