2008 Fiscal Year Annual Research Report
トップダウンアプローチによるボウル型3次元π共役化合物の合成と物性探索
Project/Area Number |
20681009
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 Kyoto University, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Keywords | フラーレン / 3次元π共役 / ボウル型分子 / 開口フラーレン / 酸化反応 / HOMO-LUMOギャップ |
Research Abstract |
フラーレンC60とピリダジン誘導体との熱反応により、C60骨格上に8員環の開口部を形成させた。さらに、この8員環開口体に酸素存在下、可視光を照射することによって、開口部の炭素-炭素二重結合をジケトンとして開裂させることによって、12員環の開口部塗もつジケトン誘導体を合成した。このジケトンに対して、トリエチルフォスファイトを反応させることによって、二つのケトンをカップリングさせてエポキシドに導いた。次に、銅触媒存在下、酢酸ナトリウムをこのエポキシドへ付加させ、加水分解を行うことにより、ジオールへと変換した。さらにこのジオールを(AcO)2IPh存在下、可視光を照射することによって、ラジカル的な酸化反応を行うことによって、新しい形式の12員環の開口部をもつC60誘導体を合成することができた。これら一連の化合物の構造は、1H&13C NMR, IR, Ms, UV-Vis等の各種スペクトルによって同定した。UV-visスペクトルにおいては、今回の新しい12員環開口体は、最長波長吸収の吸収端が900nmを超えるところまで観測され、この誘導体のHOMO-LUMOギャップが通常のC60誘導体よりも小さくなっていることが明らかとなった。密度汎関数法を用いた理論計算により、分子軌道のエネルギーレベルと軌道の広がりを検討したところ、HOMO-LUMOギャップがこれまでの12員環開口体よりも狭くなっていることが示唆され、さらに、フラーレン骨格の3次元的に広がった球状のπ共役系と、付加した有機基に由来するターフェニレン部位のπ共役系が繋がり、新しい3次元π共役系が実現されていることが明らかとなった。
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