2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20682003
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
藤巻 和宏 Waseda University, 高等研究所, 助教 (00468878)
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Keywords | 日本文学 / 日本思想史 / 宗教史 / 南都 / 宗教言説 / 如意宝珠 / 興福寺大乗院 |
Research Abstract |
本年度は、特に調査旅費を多めに計上していたが、遠方の調査としては随心院(京都市山科区)調査を二度行うにとどまった。「南都」をテーマとして掲げる本研究課題において、随心院は中心的な調査対象と考えにくいかもしれないが、所蔵資料中に南都伝来資料を多数含む点で注目される。今年度調査対象としたのは密教図像資料『別尊雑記』であり、伝来という点での南都との関連性は薄いが、次年度の主要検討課題である如意宝珠をめぐる宗教言説を考える際に無視することのできない真言密教系の秘説を収載するテクストという点で重要である。一度目の調査では研究協力者の協力を得て全五十九巻の撮影をほぼ完了することができ、二度目の調査でその補足と書誌調査を行い、全巻構成を明らかにすることができた。公刊されている仁和寺本との巻構成や記事の出入り等の比較、あるいは他の密教事相書との関係についての考察は、次年度以降の課題である。 本年度の主要テーマとして掲げた興福寺大乗院を経由して作られた諸言説、宗教構想、人的ネットワーク等の解明については、公刊されている資料類の検討のほか、国文学研究資料館や国立公文書館等のマイクロ資料による調査を基礎作業とし、分析を進めてきた。一方で、学会における南都関係の研究報告の聴講や、研究会議における議論等によっても、当該テーマに関する知見を深めることができた。その成果は、いまだ論文としての公刊には至らぬものの、ある程度の見通しを得ることができたと考えており、次年度の執筆を予定している。 なお、旅費よりも物品費・謝金の使用を優先することとなったが、本研究課題の初年度に当たり、調査に必要な機材や関連図書の購入、研究協力者への関連論文・関連データ整理の依頼といった、研究環境の整備が重要だと判断した結果である。
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Research Products
(6 results)