2008 Fiscal Year Annual Research Report
シーア派イスラーム社会を中心とした聖地巡礼の比較史的研究
Project/Area Number |
20682005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
守川 知子 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (00431297)
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Keywords | 巡礼 / 聖地 / シーア派 / 比較史 / 宗教 |
Research Abstract |
本研究課題の初年度であった平成20年度には、比較研究の出発点として、研究代表者の専門であるシーア派イスラーム社会の聖地巡礼の諸相を再検討すると同時に、「越境する巡礼行為」という点を、本年度の主たる研究テーマとして設定した。その上で、19世紀後半のシーア派巡礼者が「国境」を越えるがゆえに相対したさまざまな問題について、イランとオスマン朝下のイラクとの国境に設置された検問所兼税関を中心に検討し、その成果は、平成20年8月にトロント大学(カナダ)で行われた「第7回イラン研究国際学会」において、"Pilgrims and Immigration Procedures at the Iran-Iraq Border in the Latter Half of the 19th Century"と題して報告した。さらに、キリスト教社会における三大巡礼地のひとつに数えられるサンティアゴ・デ・コンポステーラに焦点をあて、実際に巡礼路の現地調査を行うと同時に、諸文献からその特徴を把握することに努めた。その結果、中世以降現代に至るまでの同聖地巡礼の歴史的過程や、その規模、背景、動機、実態などにおいて、シーア派社会のアタバート参詣との共通点を多数確認し、今後の研究の方向性を決める端緒を見出した。そのほか、「バイエルン州立図書館所蔵Cod. pers. 431写本をめぐって」と題する論考を『東方学』(117輯)に発表し、シーア派イマームの語録を書写した一写本の奥書署名の検討から、同写本が、イランでシーア派を国教化したサファヴィー朝の初代君主の書であることを論証した。
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