2011 Fiscal Year Annual Research Report
シーア派イスラーム社会を中心とした聖地巡礼の比較史的研究
Project/Area Number |
20682005
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
守川 知子 北海道大学, 大学院・文学研究科, 准教授 (00431297)
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Keywords | 聖地 / シーア派 / 巡礼 / イラン / 比較史 / 聖者・聖人 / イスラーム / 墓 |
Research Abstract |
本研究課題の最終年度となる今年度は、主に日本の聖地巡礼の調査、およびこれまでに調査したヨーロッパ・キリスト教社会との比較考察に重点を置いて研究を進めた。なかでも当初から比較対象として考えていた、シーア派のアタバート巡礼、カトリック教徒のサンティアゴ・デ・コンポステーラ巡礼、および日本の四国八十八箇所巡礼を実際に調査・比較した結果、3者とも巡礼にかかる日数や距離、巡礼者の規模などは同じであり、共通性があるものの、他方、アタバート巡礼やサンティアゴ巡礼は直線型の巡礼であり、「往路」と「最終目的地(聖廟)」に圧倒的な重点が置かれるのに対し、四国巡礼の場合はすべてを巡るまでの巡礼全体の「途上」が重視され、個々の「目的地(札所)」の重要性が相対的に低いことが明らかとなった。これは、「巡礼」の動態的側面からみた結果であるが、その背景には、「目的地」となる聖地・聖所の特性や成り立ちに遠因があると考えられる。この「聖地・聖所」の特性の相違は、巡礼研究として各地の巡礼地を調査・研究した際に浮かび上がってきた点であり、それらの歴史的な「成立」背景の解明とともに、現在、『聖地の世界史--創造される祈りの空間』(仮)として執筆中である。 本年度の成果としては、ほかに研究動向として「シーア派イスラームの聖地巡礼」(『歴史と地理』649、山川出版社、2011/11)や『世界地名大事典』(朝倉書店)の「マシュハド」や「ゴム」といった巡礼地(聖地)項目の執筆があり、また、イラン最大の巡礼地であるシーア派聖廟(マシュハド)の寄進財産目録の英文校訂の刊行作業が進行中で、来年度には刊行される予定である。
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