2011 Fiscal Year Annual Research Report
破綻国家の再建における国際平和活動の新しい役割と課題
Project/Area Number |
20683001
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
上杉 勇司 広島大学, 大学院・国際協力研究科, 准教授 (20403610)
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Keywords | 平和構築 / 治安部門改革 / 国際平和活動 |
Research Abstract |
本年度は、破綻国家の再建における国際平和活動に関する研究の一環として、東ティモールにおいて同国政府と国連を中心に取り組まれた治安部門改革に焦点を当てて、事例研究を進めた。具体的には、治安部門改革を担う東ティモール国防治安省傘下の治安担当国務長官事務所および治安部門改革の支援を実施する国連東ティモール統合ミッションの関係者に対する聞き取り調査や意見交換を通じて、東ティモールが取り組む治安部門改革および破綻国家再建の取り組みに関する研究を実施した。 現代の国際平和活動の中で、最も重要な取り組みになりつつある治安部門改革に焦点を当てることで、破綻国家の再建に国際平和活動が関わる際の新しい課題を抽出することができた。とりわけ、これまでの研究においては、国際平和活動に関わる側の連携や調整に課題に注目が集まっていたが、本研究では、支援を受ける側である東ティモール政府機関の動向に着目し、国連を中心とする支援者としての国際社会の側と支援を受けつつ実際に治安部門改革を担う政府機関の間に生じる課題を検証することができた。 本研究を通じて明らかになった具体的な課題は、次の2つに集約できる。まず、平和構築の重要な指針の一つである現地社会のオーナーシップに関連する課題。次に、短期的に治安の回復・維持を優先する取り組みと中長期的な視点から民主的統治の確立を重視するとの間で優先順位化を巡る課題。東ティモールの事例研究の成果を踏まえて、より一般的な破綻国家の再建における国際平和活動の役割に関する議論に還元し、平和構築における治安部門改革に関する研究書籍にまとめる成果へとつなげることができた。
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