2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20683003
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
川口 大司 Hitotsubashi University, 大学院・経済学研究科, 准教授 (80346139)
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Keywords | 経済政策 / 経済統計学 |
Research Abstract |
日本における賃金格差の変化動向について賃金センサスのマイクロデータを用いて実証分析し、1989年から2003年にかけて日本の賃金格差についてはそれほど拡大傾向を示していないことを報告した。この成果は一橋大学神林氏とミシガン大学横山氏との共同研究としてKambayashi,Kawaguchi and Yokoyama(2008)として報告した。 グローバリゼーションの進展やIT技術の浸透によって先進諸国の高技能労働者と低技能労働者の相対的な需要構造が変化したと指摘され、1980年代から1990年代にかけての米国や英国の賃金格差の大幅な拡大が説明されていることを考えると、日本の賃金格差が拡大していないということは興味深い観察である。そこでなぜ日本の賃金格差の動向が英米と異なっていたかを説明するため、日本の労働者の急速な高学歴化に焦点を当てた分析を行った。日本では1960年代後半から1970年代前半にかけてと、1990年代以降に急速に4年制大学進学率が上昇した。この結果、高技能労働者の低技能労働者に対する相対需要の増加と同じペースでの相対供給の増加が起こり、結果として相対賃金が安定的に推移したことを示すことに成功しつつある。また、産業別の分析を行った結果、IT投資が盛んに行われた産業において高学歴者の相対比率が増加していることも発見しており、IT投資が技能労働者の相対需要を増大させたことを示唆している。この研究は現在一橋大学大学院の森氏との共同研究として進行中であり、出版を目指し査読誌に投稿中である。
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Research Products
(12 results)