2009 Fiscal Year Annual Research Report
ω中間子束縛系の生成と崩壊の同時測定による中間子質量起源の探索
Project/Area Number |
20684008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
小沢 恭一郎 The University of Tokyo, 大学院・理学系研究科, 講師 (20323496)
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Keywords | カイラル対称性 / ハドロン質量の起源 / ω中間子 / J-PARC / 中性子検出器 / γ線検出器 |
Research Abstract |
本研究の目的は、原子核中での中間子の生成時の質量と崩壊時の質量の二つの測定を同時に行い、強い相互作用によって動的に中間子の質量が生み出される過程を探索することにある。具体的には、茨城県東海村のJ-PARC実験施設において、Π中間子ビームにより原子核中にベクター中間子(本研究ではω中間子)と呼ばれる性質の良い中間子を生成し測定を行う。 本研究では、二通りの測定を実現するために、2種類の検出器を用意する必要がある。Π-+p→ω+n反応の測定に用いる前方中性子の検出器とω中間子のΠ中間子Y線崩壊を捉えるY線検出器である。崩壊後のΠ中間子は、さらにY線二つに崩壊するので、合計3個のY線を捉えることとなる。本年度は主にY線検出器の準備と期待される検出器性能の評価を行った。 Y線検出器は、768個のCsI(Tl)クリスタルとPINフォトダイオードで構成されるカロリメーターである。この検出器はKEKの実験E246で使用されたものを使用する。この検出器は、過去の実験での使用実績があるため、エネルギー分解能などが十分理解されている。過去の知識を基に我々の実験で期待される質量分解能などの評価を行った。評価には、既知のエネルギー分解能を基礎としたシミュレーションを行った。その結果、ω中間子の質量(782MeV/c2)に対して18MeV/c2の質量分解能が得られた。これは、予想される質量変化(70MeV/c2)に対して十分小さい。 さらに、本実験の目指す複合測定に関して、奈良女子大学の比連崎氏や永廣さんとの協力を得て、期待されるスペクトラムや収量の評価を行った。永廣さんによるω中間子生成の計算を基とし、実験的効果や核内巾の増大を効果に入れた計算を行った。 その結果、十分大きな立体角を持つY線検出器を用いることで、核内で完全に静止し崩壊するω中間子を2000個以上収集できることが分かった。
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