2008 Fiscal Year Annual Research Report
圧力誘起非従来型超伝導体における超伝導対称性および異常金属状態の研究
Project/Area Number |
20684016
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
井澤 公一 Tokyo Institute of Technology, 大学院・理工学研究科, 准教授 (90302637)
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Keywords | 物性実験 / 低温物性 / 超伝導 / 磁性 |
Research Abstract |
本研究では非従来型超伝導体における超伝導対称性および常伝導状態で見られる異常な量子状態を調べるため, 非従来型超伝導体に対し極低温, 超高圧, 強磁場といった多重極限環境下における比熱測定のためのシステム開発を行った. その結果, 十数GPaまでの超高圧下での比熱測定が可能となった. そこで開発したシステムを用いパイロクロア超伝導体の基底状態を精密に調べた. その結果, 超伝導がある圧力で突然1次転移的に消失し, 同時に別の異常が現れることが分かった. この結果はこの系における超伝導状態を理解する上で重要な情報をとなることが期待される. また, 圧力下比熱測定のためのシステム開発に平行して, 極低温における熱伝導率測定のためのシステム開発を行った. 開発したシステムを用い, 最近精力的に研究がなされている鉄砒素系超伝導体の熱伝導率および熱ホール伝導率を測定した. その結果, 熱伝導率および熱ホール系伝導率が超伝導転移温度以下で増大することが分かった. これは, 超伝導転移温度以下で準粒子の平均自由行程が増大していることを示しており, 常伝導状態での電子輸送に非弾性散乱が重要であることがわかった. また非局在準粒子状態密度が磁場に対しほとんど変化していないことが分かった. これは超伝導ギャップが等方的であることを示唆している. さらに, 熱伝導率に温度に比例した成分が存在することが分かった. これらの結果は, 超伝導対称性が理論的に提案されているS±波対であることと矛盾しないことを示している.
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