2010 Fiscal Year Annual Research Report
低温マトリクス単離顕微分光による単一分子ナノ集合体の光物性の解明
Project/Area Number |
20685001
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
三井 正明 静岡大学, 理学部, 准教授 (90333038)
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Keywords | 単一分子蛍光分光 / ナノ粒子 / 蛍光 / 光物性 / 励起状態ダイナミクス |
Research Abstract |
本年度は、研究実施計画に基づいて以下に記す1)、2)を実施した。 1)単一分子蛍光分光(SMFS)装置の高度化の推進:「測定開始時から光子が検出されるまでの時間」および「励起光パルス照射時から光子が検出されるまでの時間」を同時サンプリングできるシステムを構築し、蛍光強度、蛍光スペクトル、蛍光寿命の時間変化の並列測定および光子相関測定、さらに光子コインシデンス測定を行うことを可能にした。これにより1分子レベルでの光物理化学挙動の多角的な定量評価が可能となった。また、小型試料台チェンバーを自作し、高真空条件や各種ガス雰囲気条件下での測定、基板温度を-20℃から50℃程度までの範囲で制御して測定を行えるシステムを構築した。以上により,本研究の目的の一つである温度可変SMFS装置の開発を達成した。これは今後の1分子計測の新しい展開を切り拓くものである。 2)アントラセン誘導体分子およびそのナノ集合体の励起状態ダイナミクスの解明:発光材料として有望な9,10-ビス(フェニルエチニル)アントラセン(BPEA)をZeonex高分子薄膜中に分散させ、1分子のマルチパラメーターSMFS測定を行った。蛍光明滅の統計的挙動をヒストグラム法および自己相関関数を用いた解析を行い,蛍光明滅の原因が励起三重項状態への項間交差によるものであることを明らかにした。さらに、光子コインシデンス測定により光子アンチバンチング(単一光子発生)の観測に成功した。これにより"1個"の分子を測定していることへの実験的確証を得ることができた。BPEAナノ粒子の研究では、水溶液分散状態で蛍光スペクトル、蛍光寿命、蛍光偏光解消の各アンサンブル測定を行い、励起状態相互作用の理論に基づく実験データの解析から、ナノ粒子中の分子間の距離や配向角を決定した。これは集合構造の評価が難しい有機ナノ粒子の研究において大きな意義を持つ成果である。
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