Research Abstract |
前年度までに合成法を確立した含酸素複素環を基本骨格とするベンゾ[1, 2-b : 4, 5-b']ジフラン(p-BDF)の種々の誘導体を合成し,その物性評価を行った.その結果,BDF骨格の3,7-位にカルバゾール置換基を有する誘導体が,正孔・電子ともにバランスのとれた高い移動度をもつ両極性非晶質材料としに機能することを見出した.また,非晶質の熱安定性も高く,有機エレクトロニクスの新しい材料となることが示唆される.実際,ヘテロ接合型有機EL素子のホスト材料としてもちいたところ,青,緑,黄色の蛍光色素ならびに赤色のリン光色素のホスト材料として機能し,一つの材料でフルカラー発光を示すことを見出した.これを用いて白色有機ELも試作し,効率よく発光することを見出している. さらに新しい骨格の探求を行うべく,BDFの合成方法にならい,窒素,リン,ケイ素を含む基本骨格であるベンゾ[1, 2-b : 4, 5-b']ジピロール(p-BDP),ベンゾ[b]シロールおよびベンゾ[b]ホスホールの構築ならびに誘導体合成のための反応を開発し,これらの半導体特性を評価した。特に,フェニレン架橋ビス(ベンゾホスホールスルフィド)(DBPSB)が太陽電池のバッファ層として既存の材料を大幅に凌駕する機能を示すという知見を得,この類縁体をさまざま合成し,ベンゾポルフィリンをドナー,フラーレン誘導体をアクセプターとしたp-i-n接合有機太陽電池のバッファ層としての検討を行った.結果的に,種々の誘導体の中でDBPSBが最も高い光電変換効率4.6%を与えることがわかった.これはDBPSBの高い電子移動度,非晶質状態の高い熱安定性によるものであると考えられる.
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