2010 Fiscal Year Annual Research Report
有機電子素子の構造革新を目指した多機能性縮環型複素環化合物の開発
Project/Area Number |
20685005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
辻 勇人 東京大学, 大学院・理学系研究科, 准教授 (20346050)
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Keywords | 元素科学 / 複素環 / 有機合成 / 機能性材料 / 有機半導体 / 有機EL |
Research Abstract |
機能のプログラミングにより合目的的分子設計というコンセプトのもと,材料開発ならびに新しい骨格形成のための反応開発を行った.化学的安定ホスト材料を開発すべく,重水素化材料を用いた速度論的同位体効果に基づくメカニズムの検証ならびに置換基変化による構造的影響の検証を行った.三重項エネルギー準位が高いホスト材料として開発した2,6-ジメチル-3,7-ジカルバゾリル置換BDF誘導体(MeCZBDF)を用いた緑色発光有機リン光素子は,素子寿命が短いという問題を有していた.そこで,劣化部位の検証のために部分的に水素を重水素化したMeCZBDFを合成し,素子寿命を検証した.その結果,メチル基の重水素化した材料のみが特異的に5倍程度長寿命化することを見出した.このデータを基に,次にメチル基をtert-ブチル基に変えた材料を合成したところ,さらに4倍程度(最初の材料比較では20倍程度)の長寿命化に成功した.材料の劣化に関する化学的メカニズムに関する知見ならびに劣化を防ぐための分子設計指針を与えるものとして重要な成果である. また,多機能炭素材料として,インダセンが縮環した化合物を種々合成した.縮環数を増やすことで,青からオレンジ色のほぼ全ての可視領域において量子収率1をいう高発光量子収率を実現した.これらはフェニレンビニレンを炭素で架橋して剛直な平面構造に固定したものと見なせ,フェニレンビニレンが持つ性質を格段に改善するものとしてその応用が期待される.さらに,単純内部アルキンへの立体および位置選択的スタンニルリチオ化反応を新たに開発し,これに基づき種々の四置換アルケンや多置換ジベンゾクリセンの合成法を確立した.これらは新たなπ共役系機能性材料として今後の応用が期待できる.
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