Research Abstract |
これまでの研究により,酸素を含む縮環π電子系化合物であるベンゾジフラン(BDF)が斬新な材料として機能することを実証してきた.すなわち,高いキャリア移動度をもち,有機ELに応用したところ従前の材料を凌ぐ性能を実現するとともに,原理的にすぐれた単純構造のホモ接合型有機ELにおいてフルカラー発光を実現するなどを世界にさきがけて示してきた.研究中に,BDFが単結晶状態で分子間相互作用が大きな構造をとることを見出し,そこで結晶状態での物性を評価すべく,新たな化合物の開発と有機電界効果トランジスタ(OFET)による移動度の評価を行った.その結果,π共役が拡張したナフト[2,1-b:6,5-b']ジフラン(NDF)が優れた機能を示すことを見出した.具体的には,ジフェニル置換体DPNDFが単結晶OFETで,移動度1.3cm^2/Vsを示すことを見出した.この値は,非晶質シリコンを凌ぐものであり,有機半導体材料としては高いものである.さらなる移動度の向上とプロセス性の改善を目指して,p-オクチルフェニル置換基を有するC8-DPNDFを開発した.この化合物は溶液プロセスで単結晶OFET作製が可能であり,移動度は3.6cm^2/Vsという高い値を示した.これらの化合物の単結晶構造解析から定量的に分子間相互作用を見績もるために.トランスファー積分を計算したところ,大きな値を持つことを見出した.また,中性状態とラジカルカチオン状態の再配列エネルギーが小さく,キャリア輸送に望ましい特性を持つことも明らかとなった.このように,フラン誘導体が優れた有機半導体として機能することを,デバイスデータとともに構造化学的解析により明らかにするなど,世界的にさきがけてその有用性を示す成果を挙げた.
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