2011 Fiscal Year Annual Research Report
次世代半導体量子ナノスピンエレクトロニクスデバイスの創製
Project/Area Number |
20686002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大矢 忍 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (20401143)
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Keywords | スピントロニクス / 半導体 / 量子ヘテロ構造 / トンネル磁気抵抗効果 / スピントランジスタ |
Research Abstract |
本研究では、次世代の量子スピントロニクスデバイスを実現する上で最も有望視されている材料系のひとつである強磁性半導体GaMnAsの研究を行ってきた。本課題最終年度においては、GaMnAsとGaAsの二重量子井戸ヘテロ構造デバイスを作製し、GaAs量子井戸における強い共鳴トンネル効果と、本素子の持つスピン依存伝導特性を組み合わせることに成功した。得られたトンネル磁気抵抗比は、バイアス電圧の変化によって正負の符号が変化することが明らかになった。一方で、GaMnAsは、強磁性半導体の最も典型的な材料として10年以上にわたって研究が行われてきたが、本研究における平成22年度の共鳴トンネル分光法を用いた研究により、GaMnAsの価電子帯構造がほとんどGaAsと同じであり、Mnによる変調の効果は極めて小さいという結果が得られた。これは、ホスト半導体のバンドのキャリアが大きくスピン偏極しているという従来の強磁性半導体の概念とは大きく異なっており、本材料を半導体ホストバンドのキャリアのスピン偏極を生かしたデバイスに応用することが非常に困難であることを意味している。そこで、本課題最終年度においては、他の材料系においても、共鳴トンネル分光法を用いて、バンド構造の解明を試みた。本研究では、四元混晶強磁性半導体(InGaMn)Asを用いたヘテロ構造を作製し、バンド構造の解析を行った。その結果、本材料においても、GaMnAsとほぼ同様の結果が得られた。これらの結果は、最も典型的な強磁性半導体であるInMnAsやGaMnAsにおいて、母体半導体のバンドキャリアはほとんどスピン偏極していないことを強く示唆している。今後、スピン分裂の大きな材料を探索する研究が、幅広く行われる必要があると思われる。
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