2008 Fiscal Year Annual Research Report
フォトニック結晶とサブバンド間遷移の融合による熱輻射制御の研究
Project/Area Number |
20686007
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
浅野 卓 Kyoto University, 工学研究科, 准教授 (30332729)
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Keywords | フォトニック結晶 / サブバンド間遷移 / 熱輻射 / 黒体 / ランジュバン方程式 / スペクトル制御 |
Research Abstract |
本研究の目的は電子の遷移スペクトルを制御できるサブバンド間遷移と光子状態を制御できる2次元フォトニック結晶を組み合わせることで所望の波長帯域においてのみ発光する効率的な熱輻射光源を実現することである。本年度は基本理論を構築し、またサブバンド間遷移のみによる熱輻射制御特性を明らかにすることを目指して研究を行った。 (1) サブバンド間遷移を多数の2準位電子系で近似し、これらがフォトニック結晶によって作り出される単一光モード(共振器モード)と相互作用し、かつ2準位電子系は半導体結晶の格子振動をモデル化した熱浴Aと相互作用し、共振器モードはフォトニック結晶外の多数の自由空間光モード(熱浴B)と相互作用するモデルとした。これに対して量子ランジュバンの手法を用いて解析を行い、熱輻射スペクトル強度を表す方程式等を得た。これにより、共振器と2準位電子系を用いて熱輻射の線幅や強度を制御できることが理論的に確認され、また最大の放射効率が得られる条件等が分かった。 (2) n型AlGaAs/GaAs量子井戸を用いてサブバンド間遷移の熱輻射制御特性を実験的に調べた。AlGaAs障壁層のAl組成は0.3程度とし、GaAs井戸層の幅を9nmから4.5nmまで変化させた。試料を100℃程度に加熱して、その発光スペクトルをフーリエ変換赤外分光計を用いて観測した。その結果、半値幅10〜20meVの狭い単一ピークの発光スペクトルが得られ、またそのピーク波長は井戸幅に応じて12μmから7μmまで変化することが分かった、これにより、サブバンド間遷移を用いた電子の遷移スペクトルの制御を通して、熱輻射スペクトルの制御が可能であることが実証された。
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