Research Abstract |
塗付法を用いて, 絶縁酸化物粉末を超電導芯間に直接導入する手法でバリア入り銀シース高温超電導線材を作製した。バリア材として, 粒径1μm以下のCa_2CuO_3, SrZrO_3, CuOおよびAl_2O_3粉末を採用し, まず線材の基本特性(加工性, 超電導相生成率, 臨界電流密度(J_c), 横断抵抗率等)におよぼす影響を調査した。なお, Ca_2CuO_3およびSrZrO_3は単体では非常に脆性の高い材料であるため, 加工性の高いBi_2Sr_2CaCu_2O_x(Bi2212)粉末を質量比で20-30%程度混合することで加工性の改善を試みた。検討したバリア材の中で最も高い通電特性が得られたCa_2CuO_3と, 通電特性はCa_2CuO_3にやや劣るがバリアなし線材と比較して一桁以上の横断抵抗率の向上効果が得られるSrZrO_3バリアを, 実用的なツイスト(撚り線)構造と複合化した線材を試作し, 通電特性および平行横磁界下での交流損失(磁化損失)特性の評価を行った。いずれのバリア材を用いた場合においても加工成型上の問題はなく, 焼成前の段階ではバリア層は超電導芯間に連続的に介在した構造が得られた。完成試料において, Ca_2CuO_3バリアーツイスト複合線材(ツイスト長14mm)はJ_c=1.7×10^4A/cm^2と同一工程で作製したバリアなし線材とほぼ同等の特性が得られたが, バリア層の連続性は超電導相形成のための焼成により大きく低下した。これを反映して, Ca_2CuO_3バリア導入による顕著な損失低減効果は得られなかった。一方, SrZrO_3バリアーツイスト複合線材(ツイスト長16mm)では, J_c=15×10^4A/cm^2とCa_2CuO_3バリア導入時よりやや低い値を示したが, 焼成後のバリア層の連続性の低下はほとんど見られなかった。結果として45Hz, 50mTの平行横磁界下において, 非ツイスト線材と比較して80%程度, ツイストのみ加えた線材と比較しても30-50%程度と大きな損失低減効果が確認された。
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