Research Abstract |
前年度に引き続き,焼成時のビスマス系(Bi_2Sr_2Ca_2Cu_3O_x)超電導体との反応性が少なく,超電導フィラメント間横断抵抗の向上に有効なSrZrO_3(加工性改善のためBi_2Sr_2CaCu_2O_xを少量混合)をバリア材とする銀シース高温超電導線材の作製と交流電磁特性の評価を行った。特に,線材幅広面に対して垂直な横磁界下において,損失低減効果が得られる運転周波数を決定する指標となる結合周波数f_cの向上に関して詳細に検討した。垂直横磁界下でのf_c向上(~数100Hz)には,バリアを導入した上で,ツイスト長を少なくとも10mm以下に狭小化する必要があるが,加工により線材構造が大きく乱れ,結果として9mm以下のツイスト長にて臨界電流密度J_cは数kA/cm^2まで低下してしまった。J_c劣化の抑制に向けて,(1)作製時のバリア導入厚の調整,(2)線幅低減(3mm以下)によるフィラメントの断線抑制,(3)中間熱処理を含めた多段階ツイスト加工といった改善を試みた。その結果,J_c>12kA/cm^2(77K,自己磁界下)を維持した上で,f_c(垂直横磁界下)を260Hzに向上することができた。本結果は,銀シース線材では国内外を通じて初めて達成されたものであり,本線材の交流機器への適応可能性を拡充する上で重要な成果である。この結果を反映して,50Hz・垂直横磁界下にて実測した本線材の交流損失は,10-50mTにおいて同一寸法でフィラメント間が完全に電磁結合している線材と比較して40-50%程度,市販線材と同様の4mm幅線材と比較して60-70%程度低減されていることを確認した。電磁気学的考察に基づき,本線材の損失発生メカニズムを考察した結果,更なるf_c向上(>400Hz)と高J_c化(>20kA/cm^2)の両立により,100-200mT程度の垂直横磁界下においても同等以上の損失低減が実現できる可能性が示唆された。
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