Research Abstract |
本年度は, 提案型制度が果たす機能と役割について理論的に整理することを目的として, 提案型制度の特徴を取り入れたゲーム・モデルを構築し, モデル分析を通じて提案型制度の理論的特性を明らかにすることを試みた.具体的には, 代表的な提案型制度の一つである構造改革特区制度を取り上げ, 以下の2つの研究成果を得た. 第一に, 特区制度を構成する複数のプロセス(e.g.多提案, 審査, 事後評価)間に働く相互作用によよって提案件数の減少や案件の小粒化が生じていることを, 不完全情報・完備情報ゲームと不完全情報・不完備情報ゲームの2つのモデルを用いて, 理論的に明らかにした.また, 地域内の提案作成プロセスにおいて社会的ジレンマが生じる可能性が潜んでいることを指摘するとともに, 首長のリーダーシップが発揮される場合や, 社会関係資本が有効に機能する場合に, 提案作成プロセスが有効に機能する可能性が高いことを指摘した. また, 社会実験の期間を操作することで提案件数が変化する可能性があることを指摘し, 社会実験の設計指針について検討した.第二に, 特区制度の審査プロセスの新たな方式として, 予測市場を用いる新しい方式を提案し, その理論的特性について分析した.分析結果として, 予測市場を導入することで提案件数が増加する可能性があることを理論的に明らかにした. 以上の研究成果は, 近年, 国土・地域計画分野において急速に普及しつつある提案型の地域政策制度の高度化を図っていく上で有用な知見であると言える.また, 次年度以降, 提案型制度のもとで地域政策を推進している事例を取り上げて調査・分析していく際に, 理論的参照点となる知見であると言える.
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