2010 Fiscal Year Annual Research Report
水系散発感染を検出するための下水試料ウイルス調査法の開発
Project/Area Number |
20686035
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 浩之 東京大学, 大学院・工学系研究科, 准教授 (00302779)
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Keywords | 病原微生物 / 都市水循環 / 安全管理 / 下水処理 / 遺伝子工学 |
Research Abstract |
下水は健康状態に関わらず全てのヒトから排出されたウイルスを含むため、下水および複数の下水処理場からの処理水を受容する都市河川の水を解析することにより、臨床研究よりも集水域における胃腸炎ウイルスの真の流行状況および分子疫学を網羅的に把握することができると考えられる。ノロウイルス、サポウイルスは地域の疫学的拠点においても重要な下痢症ウイルスとして頻繁に検出されており、また、その遺伝子型が決定されることも多い。ここでは、これらノロウイルス、サポウイルスに加え、比較的高濃度で検出されるアイチウイルスの下水および河川水中における存在状況ならびに遺伝的多様性を調べる手法を開発した。水試料中におけるウイルス遺伝子の存在状況をNested RT-PCR法により調べ、PCR陽性試料に対しては、PCR産物をクローニングすることにより、その塩基配列を決定することが可能であった。結果として、下水および河川水のいずれについても、GIノロウイルスのほうがGIIノロウイルスよりも高頻度に検出された。この結果は、患者糞便からはGIよりもGIIのほうがはるかに高頻度に検出されるとする国立感染症研究所感染症情報センターの疫学データとは大きく異なるものである。このことから、GIノロウイルスはこれまで考えられてきた以上にヒトの間に広く感染していることが示唆された。アイチウイルスについても、昨年度に開発した定量系に加え、ノロウイルスと同様の方法で多様性を調べたところ、非常に多様なウイルス株が検出された。以上より、当初からの目的であった、ウイルスの株ごとの検出手法の開発に一定の成功を収めたと言える。
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Research Products
(4 results)