2009 Fiscal Year Annual Research Report
精神病院における認知症高齢者の治療・療養環境のあり方に関する研究
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20686041
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Research Institution | Miyagi Gakuin Women's University |
Principal Investigator |
厳 爽 Miyagi Gakuin Women's University, 学芸学部, 准教授 (60382678)
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Keywords | 精神医療 / 精神科病院 / 病棟構成 / 平面プラン / 地域医療 / 治療段階 / 疾患別 / 空間利用 |
Research Abstract |
今年度に行った研究内容は以下に示す。 1. 時系列的(1980年代~現在)に我が国の精神科病院の病棟構成及び平面プランの変化を捉えた。病棟を管理方式によって区分し、精神科病院の役割を「隔離・収容」として捉えていた状況は90年代から大きく変化し、疾患別での病棟区分が主流になったことが明らかになった。空間計画においては、病棟構成の多様化、ユニット化、病室の個室化といった傾向がみられた。しかし、専門病棟に対して、疾患や症状に対応した建築計画的配慮が十分されているといえない状況が浮き彫りとなった。 2. 急性期治療病棟、認知症病棟、依存症病棟など、各種病棟を持ち、先進的な取り組みをなされている病院(5か所)を対象にヒアリングを行い、患者の症状、治療段階の相違によって、空間利用のニーズが異なり、空間に求める要件も異なることが明らかになった。よって、今後の病棟計画においてはより症状等に対するきめ細かい配慮が必要であるとの結論に至った。 3. 精神医療に対する考え方や治療・療養環境づくりの在り方について、フィンランドを中心として、海外の先進事例へのヒアリングを行った。精神病床を減らし、訪問看護を中心とした地域医療によって患者の生活をサポートするシステムづくりが積極的に推進されている。また、精神科病棟においては入院期間を2週間として、メンタルケアの立場としての治療環境づくりを目指している。 4. 福島県のA病院にて、行動観察調査及び治療プロセスの追跡調査を行った。今年度は主に4床室と個室を利用している患者における共用空間利用の違いを中心に調査を行った。調査は次年度まだ継続する予定をしており、患者を個別的に追跡し、治療プロセスと空間利用との関わりを明らかにしていく。
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