2011 Fiscal Year Annual Research Report

精神病院における認知症高齢者の治療・療養環境のあり方に関する研究

Research Project

Project/Area Number	20686041
Research Institution	Miyagi Gakuin Women's University
Principal Investigator	厳爽宮城学院女子大学, 学芸学部・生活文化デザイン学科, 教授 (60382678)
Keywords	精神科病院 / 疾患種別 / 段階的空間構成 / 場所の意味づけ / 空間の認識プロセス / 段階的空間構成の有効性
Research Abstract	今年度は本研究の最終年度であり、まずはこれまでの調査結果をまとめ、一部の成果を日本建築学会論文集への投稿を果たした。また、フィールドワークによる調査も継続しており、今年度は1950年代に建設され、我が国の精神科病院を代表する病院の建て替えによって開設された病院の全病棟を対象に行動観察調査を行った。これまでの調査を通して、精神科病院に入院している患者は共用空間を自ら意味づけしながら利用していることが明らかになった。今年度では、精神疾患を持つ患者が共用空間をどのように意味づけ、どのように利用し、意味づけと空間利用の関わりを探った。また、治療段階に伴う空間利用の広がりを追跡し、患者の空間への認識プロセスを明らかにして、精神科病棟の空間構成に対する提言を行った。新規調査を行った病院も段階的な空間構成を持つが、病棟は疾患種別ではなく、治療段階によって区分されている点において、これまでの調査対象と異なる。調査はこの点に着目し、同様な空間構成を持つ急性期病棟、慢性期病棟、社会復帰病棟における患者の空間利用、スタッフとの関わりについての考察を行った。その結果を以下に要約する。治療段階的な視点においては、症状が落ち着いてきている急性期病棟の患者が幅広く空間を活用している姿を捉える事が出来た。在院日数の長い社会復帰病棟においても、談話コーナーは有効に利用されている。スタッフとの関わりにおいては、勤務するスタッフ人数が多い平日では食堂、スタッフステーション周辺を中心とする共用空間の利用が多く、談話コーナーの利用は少ない。一方、スタッフ人数が少ない休日では談話コーナーの利用が多く見られた。スタッフの滞在はスタッフステーションが中心で、患者の病室周辺(ユニットの共用空間)での滞在は殆ど見られなかった。