2008 Fiscal Year Annual Research Report
板厚方向に強度勾配を有する薄鋼板の特異な力学特性とその応用
Project/Area Number |
20686047
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
土山 聡宏 Kyushu University, 大学院・工学研究院, 准教授 (40315106)
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Keywords | 傾斜機能材料 / 強度傾斜鋼板 / 強度勾配 / 固相窒素吸収処理 / ステンレス鋼 / 応力-歪み曲線 / 曲げ加工 / プレス成形 |
Research Abstract |
プレス成形用薄鋼板の強度-加工性バランスを改善するための新しい指針として、板厚方向に強度勾配を有する「強度傾斜鋼板」を提案した。本年度は、その一例として固相窒素吸収処理および脱窒処理により連続強度勾配を付与した強度傾斜ステンレス鋼板の製造を行った。具体的には、厚さ約1mmのSUS316L鋼板に1200℃1気圧の窒素ガス雰囲気で焼鈍(窒素吸収処理)し、正の連続強度勾配を付与した。さらに長時間の窒素吸収処理の後、真空中で適度な時間焼鈍することで脱窒させることで負の連続強度勾配を付与した。両者の平均窒素濃度を揃えることで、平均降伏強度は同-に制御されている。得られた2種類の強度傾斜鋼板、ならびに平均窒素濃度がこれらと等しい均一強度材の3鋼種に対して、引張試験および曲げ試験を実施した。その結果、降伏強さや引張強さなど引張試験で得られる強度特性には強度勾配の影響が現れず、平均特性で材料のマクロ特性が決まることが判明したが、曲げ試験においては、負の連続強度勾配を有する鋼板が正の連続強度勾配を有するものに比べて著しく低い曲げ抵抗を示すことがわかった。このことは、引張強さが同一の鋼板であっても、強度勾配制御により加工性の改善を図ることが可能であることを示唆している。つまり、強度勾配の程度や、勾配の種類(正負の不連続強度勾配など)を変化させることで、様々な特性が得られると予想された。一方、勾配の種類だけでなく。勾配の大きさを制御することも重要であると考え、マルテンサイト系ステンレス鋼の窒素吸収処理と時効処理を組み合わせた強度傾斜鋼板の製造法を考案した。これにより、表面付近と内部の硬度差ΔHVを0〜±3GPaの範囲で制御できることを確認した。
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