2009 Fiscal Year Annual Research Report
光触媒単結晶の異方的特性からみた動的機構解明の研究
Project/Area Number |
20686048
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
菊川 直樹 National Institute for Materials Science, 光触媒材料センター, 主任研究員 (00442731)
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Keywords | 酸化物 / 電子状態 / 可視光応答光触媒 / 単結晶 |
Research Abstract |
環境低負荷型技術である半導体光触媒は,クリーン燃料資源製造に道を拓く水分解や,環境浄化に貢献する有害有機物質の分解・除去を可能にする.代表的な光触媒材料である二酸化チタンは本質的に紫外光照射下のみで機能を示す.それとは対照的に,可視光下で応答する新規な光触媒材料の開発をおこなうこと,さらには発現機構につながる物質の電子状態を探るため,本年度は幅広い研究によって以下の成果を挙げることができた. (1) 新規に開発したビスマスより構成される酸化物(LiBiO_3)の光触媒効果を前年度に引き続き詳細に調べた.これまで幅広い可視光領域においてこの酸化物の光触媒効果が見られたことを発展させ,今年度はこの物質が日常生活で用いられる室内白色蛍光灯においても光触媒効果が見られた.この物質はBiが5価から構成されており,これまで報告されてきたNaBiO_3と比較すると,LiBiO3_では,Bi 6s軌道が伝導帯の構成に寄与している.これがNaBiO_3よりもバンドギャップを収縮し,より幅広い領域の可視光を吸収することで,上の蛍光灯照射下でも光触媒効果が見られると解釈で.(Joumal of the Matedals Research 25(2010)177-181に掲載) (2) これまで申請者がおこなってきたルテニウム酸化物の研究は,光触媒そのものの効果は現在大いに光触媒そのもの,のところ見られていない.しかしながら,その電子状態の理解は,大もしくはその周辺領域での研究にも参考・応用できる.赤外線集中加熱炉を用いた浮遊帯域法により得られるルテニウム酸化物の純良単結晶を得ることは,その電子状態を詳細に知る上で非常に重要である.今回われわれは2層構造をもつ層状ルテニウム酸化物Ca_3Ru_2O_7の高純度単結晶を用いて,詳細な輸送測定をおこなった.この物質の基底状態が半導体になり損ねた半金属であることを本質的モデルも用いて明らかにした.この物質も他の層状ルテニウム酸化物と同様,縮退した44軌道が電子物性の本質であることを示した.(Joumal of the Physical Society of Japan 79(2010)024704に掲載)
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