Research Abstract |
本研究では,超臨界染色プロセスの開発のために必要な超臨界二酸化炭素の溶媒特性およびポリマーフィルムへの物質移動現象の解明を目的とし,(1) 超臨界二酸化炭素に対する分散染料の溶解度,(2) 超臨界二酸化炭素雰囲気下での分散染料のポリマーフィルムへの拡散係数,(3) 分子シミュレーションによる溶解度および拡散係数の計算に関する検討を行っている. 本年度は,臨界点近傍における拡散現象に関する知見を得るために,主に非平衡分子動力学法を用いて,球形のモデル分子に対して,2成分系の相互拡散係数の計算を行った.モデル分子のポテンシャルパラメータはメタンおよびデカンの臨界温度,臨界圧力から決定した.横長の直方体セルを用い,セルの両端と中央部に濃度調節部を設け,セル内に濃度勾配を設定した.NVTアンサンブル分子動力学法により,運動方程式を解くことで分子を移動させ,各成分の流束を計算し,流束と濃度勾配よりFickの拡散の法則から相互拡散係数を算出した.同じ温度,圧力,成分組成において,濃度勾配をいくつか変えて計算を行い拡散係数を算出し,濃度勾配がないところへ外挿することで,真の相互拡散係数とした.計算結果を,メタン+デカン系の拡散係数と比較し,本計算法により拡散係数の濃度依存性を定性的に表現できることが確認された.今後,本計算法を超臨界二酸化炭素を含む系へ適用し,超臨界二酸化炭素雰囲気下でのポリマー中への染料の拡散現象の解明を行う予定である. また,実験においては流通法による測定装置により,超臨界二酸化炭素に対する混合分散染料の溶解度測定を行うとともに,紫外可視分光光度計および赤外分光光度計を用いて,超臨界二酸化炭素中での溶質濃度測定装置の作成を進めている.
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