2008 Fiscal Year Annual Research Report
低環境負荷高効率エネルギーシステムに向けたボトムアップ型機能性薄膜成長技術の構築
Project/Area Number |
20686065
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
一野 祐亮 Nagoya University, エコトピア科学研究所, 准教授 (90377812)
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Keywords | 酸化物超伝導 / エピタキシャル成長 / パルスレーザー蒸着法 / Nd : YAGレーザー |
Research Abstract |
超伝導磁気エネルギー貯蔵装置や核融合炉などの低環境負荷型高効率エネルギーシステムの低コスト・小型化を目指して、システムの核である超伝導体などの機能性薄膜の高性能化をボトムアップ型エピタキシャル薄膜作製技術の構築によって実現することが本研究の目的である。 従来の薄膜作製技術の主流はエキシマレーザーを用いたパルスレーザー蒸着(PLD)法であるが、エキシマレーザーは高価な希ガスや有毒なハロゲンガスを使うため、コスト面と環境面に問題がある。そこで、これらのガスを用いず、ランニングコストや環境面で安価・安全なNd : YAGレーザーを導入し、Nd : YAGレーザーを用いたPLD法によって高品質YBa_2Cu_3O_y(Y123)薄膜の作製を行った。 過去にいくつかのグループによってNd : YAGレーザーを用いたY123薄膜の作製に関する報告があったが、主に超伝導デバイスに向けた研究であり、液体窒素温度(77K)における臨界電流密度(J_c)は1MA/cm^2以下と超伝導線材としては不十分である。本研究では高いJ_cの実現を目指して、薄膜成長パラメータがY123薄膜の成長機構およびJ_cに及ぼす影響に関して詳細な検討を行った。その結果、MgO(100)単結晶基板上で約90Kの超伝導転移温度と液体窒素温度(77K)においてJ_c>1MA/cm^2を示すY123薄膜の作製に成功した。特にJ_cの値はNd : YAGレーザーを用いたRE123薄膜では世界最高の値である。 また、従来のエキシマレーザーを用いて、(Nd, Eu, Gd)Ba_2Cu_3O_y超伝導薄膜にBaZrO_3を添加することで、磁場中における超伝導特性の向上に成功した。透過型電子顕微鏡やX線逆格子マッピングの結果から、直径数十ナノメートルのロッド状に自己組織化したBaZrO_3が確認され、それが磁束線の運動を抑制し、磁場中超伝導特性の向上に寄与したと考えられる。
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