2008 Fiscal Year Annual Research Report
深海底熱水活動域における化学合成微生物の共生機構を分子的に理解する
Project/Area Number |
20687003
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Research Institution | Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology |
Principal Investigator |
中川 聡 Japan Agency for Marine-Earth Science and Technology, 極限環境生物圈研究センター, 研究員 (70435832)
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Keywords | 深海底熱水孔環境 / 共生 / 生物間相互作用 / 糖鎖 / グライコミクス |
Research Abstract |
本研究は糖鎖分子を扱う第三の分子生物学(=グライコミクス)を深海底に初めて導入し、共生関係にある微生物-大型生物の相互作用・相互認識機構を分子レベルで解明することを目的とするものである。 2008年度は、主に日本近海の深海底熱水活動域に由来する甲殻類およびその共生微生物系統群に注目し、(1)共生微生物における糖鎖の発現確認、(2)発現糖鎖のプロファイル解析、の2項目を中心に研究を進めた。(1)においては、発現タンパク質のプロテオミクスと糖鎖染色を組み合わせることにより、50種類を超える糖鎖修飾タンパク質を検出し、微生物の炭素代謝およびエネルギー代謝において基盤的役割を担うタンパク質の多くが糖鎖修飾を受けていることを見いだした。一方(2)においては、ヒドラジン分解法を用いて糖鎖を遊離し、官能基を持つビーズを用いて精製・ラベル化を行なった後にMALDI-TOFMS解析に供することで、部分的ではあるが発現糖鎖のプロファイル決定と大まかな構造解析を行うことに成功した。本年度の研究において共生微生物に発見した糖鎖の一部は極めて新規性が高く、共生微生物-ホスト生物間の相互認識機構に関与する可能性が高い。加えて、それらの糖鎖構造は微生物における真核生物型糖鎖の生理機能やその進化過程の研究のみならず、病理学・免疫学といった幅広い研究分野へのインパクトが非常に大きい。現在、糖鎖精製法の改善、プロファイリング精度の向上および詳細な糖鎖構造解明を試みている。
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