2008 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫類多様化の鍵を握る「翅の起源」に関する比較発生学的研究
Project/Area Number |
20687005
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
東城 幸治 Shinshu University, 理学部, 助教 (30377618)
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Keywords | 進化 / 多様性 / 昆虫 / 翅の起源 / 比較発生 / 相同 / 適応 / カゲロウ |
Research Abstract |
昆虫類における「翅の獲得」は、生物界随一の多様化の鍵を握る進化史上たいへん重要なイベントである。現在、最も原始的な有翅昆虫類であるカゲロウ目昆虫が現有している「腹部鰓」を「翅」の前適応として捉える考え、すならち「翅の鰓起源説」が最も強く支持されてはいるものの、古生代ペルム紀化石における純形態学から提唱された仮説であり、この仮説を様々な観点から検証することが希求されてきた。古生物学より、「翅」や「鰓」は付属肢の基部関節の外葉に相当する構造物と考えられているものの、これらの原始的形態をよく留める現生昆虫類は存在せず、この仮説の検証は困難視されてきた。しかし本研究は、付属肢基部節に「外葉」的構造を残存するカゲロウ類(オビカゲロウ)の発見に立脚したものであり、このカゲロウの基礎的な生物学知見を蓄積してきた。特に、翅の起源の議論においては相同制の検討が重要であり、形成プロセス(発生)を追跡することは必須である。河川源流域の特殊な環境にのみ棲息するオビカゲロウであるが、棲息地の綱羅的把握や分子系統学的なアプローチも含めた分類学的検討をはじめ、形態形成の詳細な追究へ向け、生殖様式の把握を通し、胚発生の研究に不可欠な採卵法、胚のインキュベート法、様々な発生学的観察に耐え得る固定法を確立するとともに、胚発生の概略を把握した。また、このオビカゲロウの他にも、「翅起源」の議論に効果的知見をもたらすことが期待される、カゲロウ類や同じく原始的有翅昆虫であるトンボ類も見いだし、いずれの種群においても比較発生学的観察法を確立させ、「翅-鰓-付属肢」相同制追究の基礎を築いた。
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