2010 Fiscal Year Annual Research Report
ダイニンの構造解析に基づいた、AAA型分子モーター作動機構の解明
Project/Area Number |
20687011
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
昆 隆英 東京大学, 蛋白質研究所, 准教授 (30332620)
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Keywords | 分子モーター / 生物物理 / 酵素反応 / ナノバイオ / ダイニン |
Research Abstract |
ダイニンは、ATPの化学エネルギーを利用することで微小管上を滑り運動する、巨大なAAA+型分子モーターである。私たちの細胞内では、細胞内物質輸送、細胞分裂、細胞移動、鞭毛・繊毛運動を含む広範な細胞運動を駆動することで、重要な生理的機能を担うことが明らかにされてきた。しかし、ダイニン自身がどのような分子メカニズムで動いているのかという根本的な問いについては、半世紀近い研究にもかかわらず、多くの未解決問題が残されているのが現状である。 本研究課題は、ダイニンの機能面での解析を進めるとともに、構造面での研究を強力に推進することで、その運動メカニズムの全貌を明らかにすることを最終目標としている。 最終年度である平成22年度の研究では、ダイニンメカニズム研究において非常に重要な研究成果を上げることに成功した。ダイニンモータドメインは分子量約38万の巨大モーターユニットであり、その巨大さと分子としての柔軟さから、従来、高分解能構造解析に必須な結晶化がきわめて困難であるとされてきた。研究代表者らは、本研究課題において、この全領域の結晶化を達成し、X線結晶構造解析法により5Å分解能での構造情報を得ることに成功した。また、この構造情報を基に、ダイニンが微小管上を運動する際に鍵となるメカニズム-微小管結合部位とATP加水分解部位との間の分子内情報伝達機構-について詳細な構造モデルを構築した。これらの研究成果は、新規かつ重要な研究成果を発表する場である米国Biophysical Societyの"New and Notable" symposiumにおいて招待講演として発表した。ダイニンの運動メカニズムを解明するためには、原子分解能(3.5Å以上)でその構造を決定する必要があるが、本研究によってこの課題を達成するための基盤は確立されたと言えよう。
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Research Products
(5 results)