2008 Fiscal Year Annual Research Report
耳石の微量元素組成と安定同位体組成を指標とした魚類の回遊と集団構造の解析
Project/Area Number |
20688008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 崇臣 The University of Tokyo, 海洋研究所, 准教授 (70323631)
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Keywords | 耳石 / 微量元素 / 系群判別 / 回遊履歴 / LA-ICPMS / EPMA / ニシン / 通し回遊魚 |
Research Abstract |
本年度は、レーザーアブレーション高周波誘導結合プラズマ質量分析法を用いて魚類耳石中の微量元素を多元種同時に測定し、水産重要種であるニシンやウナギなどの回遊魚の解析を行った。北海道厚岸湖、青森県尾駁沼および岩手県宮古湾で採集された計27個体のニシンを用いて鶏群判別を試みた。各個体から耳石を摘出後、両面研磨を行った。耳石中の微量元素(Li, B, Na, Mg, P, K, Mn, Rb, Sr, Ba)および^<43>Caのイオンカウント数(CPS)は、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法により測定した。各地点間の比較には、各元素の対^<43>Ca CPSをもとにした対^<43>Ca mol比を用いた。測定した10元素のうち、4元素(Na/Ca, K/Ca, Mn/Ca, Rb/Ca)は、採集した3地点間において、有意に異なる値を示した。測定を行った27個体を各採集地点に分類したところ、91%の高い正判別率を示した。特に、尾駁沼のニシンは宮古湾および厚岸湾のニシンとは完全に区別された。以上より、ニシンの耳石微量元素組成は採集地点によって異なることが示され、系群の判別に有用であると考えられた。また、今回対象とした3地点のニシンは、独立性の高い地域的な集団であることが示唆された。紀伊水道で採集された産卵回遊中の銀化ウナギ37個体を本研究に用いた。各魚は、SrとCaの濃度を測定し,Sr/Ca比を算出した。紀伊水道で採集されたウナギは、川ウナギ、河口ウナギ、海ウナギの3つの回遊型が存在した。ただし、ウナギの回遊の典型である川ウナギは、全体のわずか19%にとどまり、河口ウナギと海ウナギがその大半を占めていた。以上から、再生産に高く寄与しているのは、河口ウナギと海ウナギであると考えられた。
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