2009 Fiscal Year Annual Research Report
耳石の微量元素組成と安定同位体組成を指標とした魚類の回遊と集団構造の解析
Project/Area Number |
20688008
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
新井 崇臣 The University of Tokyo, 海洋研究所, 准教授 (70323631)
|
Keywords | 耳石 / 微量元素 / 系群判別 / 回遊履歴 / LA-ICPMS / EPMA / 回遊魚 / 多様性 |
Research Abstract |
本年度は、レーザーアブレーション高周波誘導結合プラズマ質量分析法や波長分散型X線分析装置を用いて魚類耳石中の微量元素を多元種同時に測定し、水産重要種であるニシンやウナギなどの回遊魚の解析を行った。ニシンの飼育は、水温一定(13℃)で塩分を変化させた3つの実験群(11,23,35‰)、塩分一定(23‰)で水温を変化させた3つの実験群(9,13,17℃)で行なった。ニシンは、孵化から60日間飼育し、これを標本とした。耳石中の微量元素組成(Na/Ca,Mg/Ca,K/Ca,Sr/Ca,Ba/Ca)は、レーザーアブレーション誘導結合プラズマ質量分析法(LA-ICP-MS)を用いて測定した。得られた耳石中の元素組成と、水温および塩分との関係性は、分散分析法および相関係数を用いて解析した。水温を変化させた実験群間においては、測定した全ての元素カルシウム比において有意差が見出された。一方、塩分を変化させた実験群間においては、K/Ca、Sr/CaおよびBa/Ca比で有意な差が見出された。特に、Sr/Ca比と塩分は、強い正の相関関係を示した。以上の結果から、ニシン耳石中の元素組成は、水温と塩分から影響を受けるが、その影響の程度は元素によって異なることが示唆された。インドネシアジャワ島で採集された熱帯ウナギA.bicolor bicolorを用いて回遊履歴に推定を行ったところ、4つの回遊型が見いだされた。このことから、インドネシアに生息する本種は、多様な回遊生態を有することが明らかになった。
|