2010 Fiscal Year Annual Research Report
地球温暖化による海水温上昇に伴うクロマグロの産卵海域規模の変化予測
Project/Area Number |
20688009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北川 貴士 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教 (50431804)
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Keywords | 水産学 / クロマグロ / 地球温暖化 / 飼育実験 / 数値実験 / 仔魚 / 海水温 / 輸送 |
Research Abstract |
昨年度同様環境水温(23-28℃)が本種の卵発生に及ぼす影響について検討した.本年度は昨年の実験結果の再現性の確認と定量化に重点を置いた.昨年度に比べ生残率はやや低下したものの,どの温度区においても昨年と同様の結果を得ることができた.生残率低下の要因は高産卵水温(27.9℃)による卵質の低下が一因であると考えられた.本年度は卵の比重を発生段階ごとに計測した.発生直前に海水に近づく傾向にあったが常時海水より低比重であった.天然海域では卵は産卵直後急激な温度変化を経験することが示唆された。 クロマグロの高水温下での体温生理状態を,熱・亜熱帯海域に生息する同属種と比較するため,沖縄・石垣島沖でキハダへの小型記録計(深度・水温・体温計測)の装着・放流試験を行った.2010年6月に24個体放流した.その後,回収された13個体の解析を行いクロマグロと比較した.体温変化から全熱交換係数および産熱速度を算出した.産熱速度はクロマグロとは同程度であったが,全熱交換係数は約一桁高い値であった.これはキハダは放熱能が高く,クロマグロと同程度の代謝熱であっても,環境水中に体熱を即座に排出することで,過度の体温上昇を避けることができることを意味する.逆にクロマグロの魚体は放熱能に乏しいため,今後100年の海水温上昇は,本種分布に影響を及ぼすと考えられた. 最後に来年度,地球温暖化が産卵海域の規模面積や輸送過程に及ぼす影響について定量的な予測を行うための温暖化海洋データの構築を行った.1900年から2100年まで月別に100°Eから80°W,10°Sから70°N,0.1°格子,上層1000mの範囲で流速,水温,塩分データを構築した.
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