2010 Fiscal Year Annual Research Report
イヌバベシア症の病態解析を通じた抗赤血球抗体による溶血メカニズムの解明
Project/Area Number |
20688014
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
山崎 真大 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 准教授 (40322846)
|
Keywords | イヌバベシア症 / 抗赤血球抗体 / heat shock protein 70 / バベシア原虫 / 貧血 |
Research Abstract |
平成21年度までの研究で、ほとんどの赤血球の膜表面にはhsp70分子は存在せず、バベシア原虫が多数寄生した赤血球のみ、膜表面にhsp70分子が存在することが明らかになり、抗hsp70抗体はバベシア症で検出される抗赤血球膜抗体の一種ではないことが明らかになった。このため、抗hsp70抗体はバベシア原虫の排除に貢献していることが期待されたので、平成22年度には抗hsp70抗体のバベシア原虫に対する効果を検討し、hsp70のワクチン分子候補としての可能性を考察した。まず、hsp70分子のバベシア原虫における局在を検討したところ、赤血球内寄生型のバベシア原虫では膜表面にはhsp70分子は存在せず細胞内に存在し、赤血球外型のバベシア原虫では膜表面にhsp70分子が存在することが示唆された。昨年度の成績と合わせて、バベシア原虫は赤血球内での発育と増殖が完了したバベシア原虫はその膜表面にhsp70分子が現れ、赤血球外に放出されると考えられ、hsp70分子はバベシア原虫の赤血球内への再侵入に必要な分子であることが予想された。そこで、バベシア原虫を抗hsp70抗体を含んだ培養液を用いて培養を行い、その増殖を観察したところ、使用した25μg/mLの抗hsp70抗体ではバベシア原虫の増殖に変化はなく、抗hsp70抗体はバベシア原虫を中和できないと考えられた。以上の結果から、hsp70分子は赤血球外型バベシア原虫の膜表面に存在するものの、抗hsp70抗体はこの原虫の中和も赤血球への侵入阻害もできず、hsp70分子はバベシア原虫に対するワクチン候補分子としては利用できないと思われた。
|
Research Products
(7 results)