2008 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロRNAによる遺伝子発現制御システムを搭載したアデノウイルスベクターの開発
Project/Area Number |
20689004
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Research Institution | National Institute of Biomedical Innovation |
Principal Investigator |
櫻井 文教 National Institute of Biomedical Innovation, 基盤的研究部・遺伝子導入制御プロジェクト, 研究員 (70370939)
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Keywords | アデノウイルスベクター / 遺伝子発現制御 / マイクロRNA / 遺伝子治療 / 自殺遺伝子 |
Research Abstract |
本年度は、自殺遺伝子発現アデノウイルス(Ad)ベクター腫瘍内投与後の肝毒性を軽減することを目的として、活殺遺伝子発現カセットの3,非翻訳領域に肝臓特異的microRNAであるmiR-122aの標的配列を4コピー挿入したAdベクターを作製した。本AdベクターをmiR-122aを高発現するHuh-7細胞に感染させたところ、従来のAdベクターと比較し、その遺伝子発現量は大きく抑制された。一方で、miR-122aを発現していない細胞での遺伝子発現量は、従来型Adベクターと同程度であった。次に両ベクターをマウス皮下腫瘍に直接投与し、腫瘍ならびに肝臓での遺伝子発現量を検討した。その結果、本Adベクターの腫瘍における遺伝子発現量は従来型Adベクターと同程度であったのに対し、肝臓では100分の1以下に抑制されていた。肝臓に集積したAdベクターゲノム量については両ベクター間に有意な差は観察されなかったことから、両ベクターとも腫瘍内投与後、一部が腫瘍から漏れ出て肝臓に移行するものの、本Adベクターの場合にはmiR-122aにより肝臓における翻訳が阻害されたために、遺伝子発現量が減少したものと思われる。次に自殺遺伝子であるHerpes simplex virus thymidine kinase(HSVTk)を用いて、癌遺伝子治療実験を行った。両ベクターをB16皮下腫瘍に対し直接投与したところ、同程度の優れた抗腫瘍効果が観察された。しかしながら従来型Adベクター投与群では強い肝毒性が観察されたのに対し、本Adベクター投与群では肝毒性はほとんど認められなかった。これはmiR-122aにより、肝臓におけるHSVTkの発現が抑制された、ためと思われる。microRNAによる遺伝子発現制御機構を搭載した本Adベクターは高い安全性と有効性を兼ね備えており、今後の遺伝子治療の進展に大きく貢献するものと期待される。
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Research Products
(5 results)