2008 Fiscal Year Annual Research Report
自己DNAによる自然免疫活性化の分子機構とその生理作用
Project/Area Number |
20689008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
川根 公樹 Kyoto University, 医学研究科, 助教 (60362589)
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Keywords | 免疫学 / シグナル伝達 / 関節リウマチ / マクロファージ / DNA分解 |
Research Abstract |
赤血球はその分化過程において、脱核により自身の核を放出する。私達は、この脱核された核はマクロファージに貪食され、核DNAはDNase IIによって分解されることを明らかにしてきた。DNase II欠損マウスでは、未分解DNAがマクロファージに蓄積し、活性化されたマクロファージが産生するIFN-βの作用で赤血球の発生が妨げられる。その結果、マウスは重度の貧血を示し胎生期で死亡するが、DNase IIとIFN-IR(IFN-βのレセプター)遺伝子の二重欠損マウスは貧血を起こさず生存して誕生する。本年度は、自己DNAの蓄積により、IFN-βの産生が誘導される機構を明らかにする目的で、微生物感染時にIFN-βなどのサイトカインを誘導するのに必要な転写因子、IRF-3及びIRF-7の欠損マウスをDNase II欠損マウスと交配させ、多重欠損マウスの解析を行った。すると、IRF-3/IRF-7/DNase II三重欠損マウスは、DNaseII/IFN-IR二重欠損マウスとほぼ同等の確率で貧血を免れて誕生した。さらに、胎仔肝臓におけるIFN-β遺伝子の発現をreal-time PCRによって定量した結果、IRF-3/IRF-7/DNase II三重欠損マウスではIFN-βの誘導が著しく抑制されていた。よって、DNaseII欠損によって蓄積した未分解DNAからのIFN-β誘導には、IRF-3及びIRF-7が関与しており、微生物感染時と同一の転写因子が用いられていることがわかった。すなわち、自己DNAの蓄積が、外来微生物侵入時と同様の経路を介して自然免疫を活性化させることが明らかとなり、ヒトにおいても自己分子の分解不全が、自然免疫の誤作動を導き免疫疾患を発症させる可能性を提示した。
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Research Products
(8 results)