2010 Fiscal Year Annual Research Report
生活習慣病の新規ターゲット味覚関連分子:ポリバレントケモセンサーとしての機能解析
Project/Area Number |
20689034
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
重村 憲徳 九州大学, 大学院・歯学研究院, 准教授 (40336079)
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Keywords | 味覚 / 遺伝子多型性 / 受容体 / 臓器 / ヒト / 肥満 |
Research Abstract |
生物は、生体内外の様々な化学的変化を敏感に感知し、様々な制御ネットワークをダイナミックに調節することでホメオスタシスを維持する。この糖代謝や、電解質、アミノ酸代謝などの制御システムの中心的役割を担う"起点"となるのが"化学物質センサー"である。近年、その一つである味覚受容体が、口腔の味細胞に発現するだけでなく、他の臓器にも発現していることが明らかになってきた。このことから味覚受容体は口腔のみならず、様々な臓器で、様々な機能をもつ"ポリバレント(多機能)ケモセンサー"である可能性が強く示唆された。本研究では、体内の味覚関連分子の発現分布を調べ、またこれらの遺伝子多型性(SNP)が肥満、糖尿病に関与するかどうかを明らかにすることを目的とする。本年度は、前年度までにゲノムデータ解析により肥満との関連が示唆され、また、うま味(アミノ酸)感受性の個人差の原因である可能性が示唆された、その受容体候補遺伝子T1R1/T1R3の2つのSNPsの影響をさらに詳細に調べるために、HEK293細胞強制発現系とCaイメージング法を組み合わせて機能解析を行った。この結果、T1R1のAla372がThrになると、うま味物質に対して高感受性の受容体を形成すること、一方、T1R3-Arg752がCysになると低感受性の受容体を形成することを明らかにした。また興味深いことに、これらのSNP頻度には人種差があり、肥満発症頻度が低い中国人や日本人などアジア人では、うま味高感受性のT1r1-372Thrの頻度が高いことがわかった(PLoS One, 2009, AJCN, 2009)。近年、うま味受容体が消化管にも発現していることや、肥満の女性は、うま味感受性が低いという結果が報告された。以上のことより、味覚受容体は様々な臓器でポリバレントケモセンサーとして働いており、生活習慣病の新規ターゲットとなる可能性が示唆された。
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