2008 Fiscal Year Annual Research Report
口腔前癌病変における細胞老化の誘導メカニズムとその発癌防御機構としての役割の解析
Project/Area Number |
20689035
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
今井 暁子 (高橋 暁子) Japanese Foundation For Cancer Research, ん生物部, 研究員 (60380052)
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Keywords | 細胞老化 / 癌 |
Research Abstract |
細胞老化は、培養中の正常細胞にテロメアの短小化、DNA ダメージや癌遺伝子の活性化など、発癌の危険性のあるストレス(発癌ストレス)が生じた場合に、異常細胞の増殖を阻止するために働く癌抑制機構と考えられている。細胞老化の発癌防御機構としての役割を明らかにするために、温度感受性型 SV40large-T抗原(LT)により不死化させたヒト細胞株(SVts8)を使用し、非許容温度で5日間培養した細胞と、その後許容温度に戻しても細胞質分裂阻害により増殖が停止したままの細胞からRNAを回収し、25,000遺伝子にたいしてのマイクロアレイ解析を行った。その結果、LTによって活性が制御されているp53の標的遺伝子やRBによって抑制されるE2Fの標的遺伝子の発現が大きく変動しているだけではなく、最近Senescence-associated secretory phenotype(SASP)として報告されている炎症性サイトカインやケモカインの発現も上昇していることが明らかとなった。また非常に興味深いことに、これらのSASPに関わる遺伝子群は細胞を許容温度で培養しRBとp53を失活した後にも発現レベルが高いまま保たれることから、細胞老化によっておこる遺伝子発現の一部は、細胞老化を誘導する原因を取り除いた後も非常に安定的に維持されることが推測され、細胞老化の不可逆性に関与している可能性も示唆された。
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