2010 Fiscal Year Annual Research Report
口腔前癌病変における細胞老化の誘導メカニズムとその発癌防御機構としての役割の解析
Project/Area Number |
20689035
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Research Institution | Japanese Foundation For Cancer Research |
Principal Investigator |
今井 暁子 (高橋 暁子) (財)癌研究会, 癌研究所がん生物部, 研究員 (60380052)
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Keywords | 細胞老化 / 癌 / p16^<INK4a> |
Research Abstract |
細胞老化は発癌の危険性のあるさまざまなストレス(DNAダメージや癌遺伝子の活性化など)に対して異常細胞の増殖を阻止するために働く重要な癌抑制機構であるが、その誘導機序ならびに不可逆的増殖停止機構に関しては未だ不明な点が多い。そこでヒト正常線維芽細胞を用いてがん遺伝子誘導性の細胞老化や分裂寿命による細胞老化を誘導し、その遺伝子発現変化についてDNAマイクロアレイ解析を行った。さらに増殖刺激による不可逆的増殖停止の誘導メカニズムを明らかにするために無血清培地条件下においても同様の実験を行い、これらのデータと前年度までに得られた不死化ヒト細胞株のデータを統合し、細胞老化誘導前後の遺伝子発現変化について網羅的解析をおこなった。その結果、増殖刺激による活性酸素(ROS)の産生シグナルとE2F/DP転写因子複合体によって制御される抗ROSシグナルのバランスによって細胞老化の不可逆的増殖停止が規定されている可能性を見出した。 また、前年度までの研究で明らかとなった細胞老化で特異的に分解される蛋白質の結合蛋白を解析することによって、細胞老化で活性化するユビキチンリガーゼ(E3)の検索を行った。その結果、DNA損傷シグナルやROSによって活性化したE3が標的蛋白質をユビキチン化によって分解することで、近年報告された細胞老化の重要な表現形の一つであるSenescence-associated secretory phenotype(SASP)の発現を制御していることを明らかにした。さらに、DMBA+TPA皮膚化学発癌モデルによって細胞老化が誘導されたマウスのパピローマ組織や、若いマウスと老化したマウスの各個体から得られた組織を比較して解析を行った結果、本研究で明らかにした細胞老化特異的な蛋白分解機構が生体内においてもSASP因子の発現制御に関与している可能性が示唆された。
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