Research Abstract |
本研究は,3年間で(1)生体機能模倣型の多機能触覚センサ素子の製作と(2)人工皮膚感覚モジュールの製作を目的として研究を進めている.(1)については,皮膚構造をモデルとした複数の層(表皮,真皮,皮下組織等に対応)から構成させる多機能触覚センサの作製と評価が主な内容であり,平成20・21年度に実施した. 平成22年度は,(2)について内容を実施するため,モジュールの処理部にあたる神経パルス列の生成方法を検討し,マイコン(H8/3694F)を用いて動作を確認した.皮膚内部の触受容器は,接触刺激を受けると神経パルス列を生成するが,刺激の強度に応じて発火する遅順応型(Slowly Adapting : SA)と,刺激の時間変化に応じて発火する速順応型(Fast Adapting : EA)とがあり,変位,速度,加速度に対応した神経パルスを発生している.本研究では,この触受容器の特徴である応答特性に着目し,機能を具現化することを試みた.具体的には,触覚センサの接触力や温度に対応した連続的なセンサ信号電圧から,その刺激の大きさを表す変位信号,変化分を表す速度信号,更に速度信号の変化分を表す加速度信号を生成し,それぞれの大きさを神経パルス列の頻度に変換して出力するプログラムを作成した.その結果,任意に変化するセンサ信号電圧をマイコンへ取り込むことにより,変位,速度,加速度の3成分に対応したパルス列を発生させることが確認できた.これによって皮膚の触受容器の応答に類似した人工皮膚感覚モジュールを構成しうる可能性が示された.したがって,本研究が目指している人工皮膚感覚モジュールの触覚センサ部とパルス生成部のそれぞれの機能については動作確認ができたが,それらが一体形となったモジュールまで至っていないため,システム全体の結合と評価が今後の課題である.
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