2009 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
20700188
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
杉田 祐也 The Institute of Physical and Chemical Research, 動的認知行動研究チーム, 研究員 (70469906)
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Keywords | 概念化学習 / 認知ロボット / 役割一述語構造 / 分散表現 / ニューラルネットワーク / イメージスキーマ / 発達学習 / 記号接地問題 |
Research Abstract |
前年度に得た行為の概念化学習の計算モデル実験の結果を、認知心理学の視点から捉えなおすことを試みた。 その目的は、従来の認知理論が計算論的な説明を与えることに失敗している諸現象に対し、ひとつの可能な計算論的解釈を与えることである。たとえば、Kamiloff-Smithが提案した概念発達のシナリオや、LakoffとJohnsonが提案した言語理論において、知覚運動経験の構造的理解のメカニズムを説明することの困難が発生しており、いまだに解決されていない。これらの困難の本質は「経験を構造的に理解するために必要な構造を、いかにして経験から獲得するか」である。この問題は矛盾を含んでおり、単純に解消することはできない。 本研究は、この矛盾を解消するための理論的整備を行った。重要な発見は次のとおりである。 1) 認知心理学における心的概念の表象や認知言語学の意味表象において、当たり前のように用いられている役割-述語構造(role-argument structure)の背後にある1つの可能なアナログメカニズムを提案した。これによって、類似性に基づいたスキルの転移と、役割-述語構造に基づいた要素概念の組み換えによる新たなスキルの生成を、共通の計算論的枠組みで論じることができるようになった。 (組み換えとは、「ボールを蹴る」と「缶を拾う」の2つの行為の経験に基づいて、新たな行為である「缶を蹴る」を生成するようなことを指す。) 2) この枠組みの下で、Kamiloff-Smithが述べている概念発達のシナリオのひとつの可能な計算論を与えることができた。このシナリオはUシェーブ現象とも関係が深く、特定の状況だけに適用可能な生得的スキルが、広範な状況に対してシステマティックに対応できるスキルに取って代わるメカニズムの説明を試みている。本研究は、このメカニズムの背後にある可能な計算論的メカニズムを提案する。
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