2009 Fiscal Year Annual Research Report
跳躍眼球運動時における位置情報処理の空間周波数特性に関する研究
Project/Area Number |
20700195
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Research Institution | Advanced Telecommunications Research Institute International |
Principal Investigator |
水科 晴樹 Advanced Telecommunications Research Institute International, メディア情報科学研究所, 研究員 (20389224)
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Keywords | 跳躍眼球運動 / 空間知覚 / 空間周波数 |
Research Abstract |
平成21年度は、前年度に整備した実験環境及び装置を用いて、跳躍眼球運動(サッカード)時に瞬間呈示された視覚刺激の知覚的位置に関する空間周波数特性を、心理物理学実験により実際に測定した。 刺激の空間周波数の影響を明らかにするために、本研究では高空間周波数成分(輝度によるエッジ)を含む刺激と含まない刺激とを用いて比較を行った。具体的には、半径2degの円刺激と、そのエッジをぼかして高空間周波数成分を除去した刺激(ガウシアン刺激)を用いた。この両者は刺激に含まれる輝度の最大値が等しく、また画面の平均輝度が同一になるようにガウシアン刺激の広がりを調整した。この2種類の刺激に加えて、従来の研究でよく用いられてきたドット刺激(半径0.25deg)を加えた3条件で実験を行った。 視覚刺激は常に画面の中央に、サッカード開始前後のランダムなタイミングで13.3ms呈示された。被験者は画面の中央を挟むように、左から右へ8deg視線を移動し、その後、呈示された刺激の中央をマウスカーソルで示して応答した。被験者は各刺激条件で200試行ずつ、計600試行を20セッションに分けて行った。 その結果、いずれの刺激条件においても、サッカード開始50ms前くらいから刺激がサッカードの方向(右方向)にずれて知覚されるようになり、サッカード中にずれが減少し、サッカード直後には逆方向(左方向)にずれて知覚された。この結果は、多くの過去の報告とも一致している。円刺激とガウシアン刺激の条件では、刺激の空間定位の時間経過やずれの量にほとんど違いがなかった。このことは、高空間周波数成分の有無は、サッカード時の刺激の定位に影響しないことを示唆する。一方で、ドット刺激の場合は他の2条件と比べて応答のばらっきが大きくなった。このことは、刺激の大きさ、あるいは目に入射する光量の違いであると考えられ、今後の検討が必要である。
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