Research Abstract |
本研究では,ある種の扱いやすい確率モデルを構築することと,そのモデルを実際の学習・処理すべきデータ,およびそれを処理している最中の人間の脳活動計測データへ適用し,挙動を調べることを目指している.本年度は,特にスパース(疎)という特徴を持つ信号源系列について,その再構成理論に取り組んだ.これは,信号系列のモデルとして,画像,音声,神経スパイクをはじめとする様々な実データへの応用が考えられると同時に,MEG(脳磁場計測)の脳活動計測データの解析をはじめとする線形逆問題一般においても重要な役割を果たす問題である.特に,線型方程式による観測モデルを立てたとき,ソースベクトルの複数の要素がある一つの単位を表すという,いわゆるブロックスパース(スカラ場の離散化でなく,ベクトル場の離散化であるような)構造を負う場合を含めて検討を行った.そして,劣決定線形逆問題について,最もスパースな活動パターンであるベクトル場中の点信号源について,l1-ノルムを拡張した評価関数による再構成理論を証明し,論文化した(Inverse Problems, Vol.26, 115016,全18頁).また,同論文で,1)再構成定理証明時に用いた再構成手法が,任意の計測値に対して必ず疎な解をもたらすこと,さらに2)選択される活動源が,個々の活動源の活動パターンを非負倍しても不変なことを示した.点信号源を再構成可能な手法は,劣決定線形逆問題においては必ず非線形写像となるため,得られる推定解の性質や推定解間の関係は一般には議論しにくい.これに対し,今回は,点信号源再構成の必要十分条件・疎な解の必然・活動成分(非零成分)の一定範囲での不変性保証の各命題について,解の数値例により示される傾向などではなく,きちんとした数学的証明を与えることに成功した.そのため,この結果は,多くの逆問題・推定問題において疎なベクトル場を扱う上で依拠すべき基礎になることが期待できる.
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