2008 Fiscal Year Annual Research Report
言語進化論的アプローチによる文法形成過程のモデル化
Project/Area Number |
20700239
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 誠 Japan Advanced Institute of Science and Technology, 情報科学研究科, 助教 (50377438)
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Keywords | 進化言語学 / エージェント / モデル化 |
Research Abstract |
本研究は, 自然言語の文法的特徴である語形変化が言語使用者間のコミュニケーションによって動的に形成される過程をマルチエージェントモデルによって再現し, 構文発達との関連を示す定量的なモデルの構築を目的とする. 語形変化とは, 特に動詞の屈折や名詞の格変化等の表層に現れる単語の変化を指す. 一般に, 語形変化は構文を理解する上で補助となり, 言語理解に役立つといわれている. 本研究は, このような文法構造の発達の解明を目指す. 研究計画としては, 大きく2つに分けられる. (1)言語学的調査 : 主に既存コーパスと言語学書籍から現象分析を行い, 実験用コーパスおよび文法の開発を行う. ここから, 現存言語の文法要素と構文理解との関係を調査する. (2)マルチエージェントモデルの構築とその評価 : エージェントが獲得した文法による発話と共通文法の学習をモデル化し, その結果を発話環境と比較することでモデルを評価する. このうち, 平成20年度の計画として, おもに(1)言語学的調査に重点をおいて研究を遂行した. (1)言語学的調査に関しては, 複数言語にわたって文献を調査し、文法の調査を行った. これに基づき, コーパスからの文法抽出について検討した. また, 構文解析器の性能評価を行い, 抽出した文法の実装に関する調査を行った. (2)エージェントモデルに関しては, 実際にモデルの構築を行った. 具体的には, 会話を行うエージェント間をネットワークで結ぶことによって地理的要因を設定し, それによる言語変化の過程の違いを観察した. 実験の結果として, 言語の発達過程には同じ言語話者同士でコミュニティーを形成することが重要であり, 新言語が使用されるためには早期にコミュニティーを形成することが条件となることが確認された.
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