2009 Fiscal Year Annual Research Report
言語進化論的アプローチによる文法形成過程のモデル化
Project/Area Number |
20700239
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 誠 Japan Advanced Institute of Science and Technology, 情報科学研究科, 助教 (50377438)
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Keywords | 進化言語学 / エージェント / モデル化 |
Research Abstract |
本研究は,自然言語の文法的特徴である語形変化が言語使用者間のコミュニケーションによって動的に形成される過程をマルチエージェントモデルによって再現し,構文発達との関連を示す定量的なモデルの構築を目的とする.本年度は研究計画にある,(1)マルチエージェントモデルの構築および,(2)数理モデルによる理論値との比較検証を重点的に行った. マルチエージェントモデルの構築にあたっては,エージェントが発話,理解,および学習を行うことで文法を獲得するという制約を設けた.したがって,複数世代にわたって文法を構築するエージェントを設計し,親子間のコミュニケーションを通じて文法が洗練されていく様子をモデル化した.このモデルにおいては,特に人間の持つ認知バイアスが構文獲得に有効に働くことを示した.また,空間上に複数のエージェントを配置し,同世代間のエージェント同士でコミュニケーションをとることで,使用言語が拡散する様子をモデル化し,言語変化に関するネットワーク構造の重要性を示した.これらの2モデルにより,言語の共時的変化と通時的変化のようすを示すことができた.本研究の目的を達成するためには,これらのモデルをいかに統合し,さらにコーパスから抽出した言語または文法構造を取り入れることが必要である. また,既存研究である数理モデルとの比較を行った.エージェント間の局所的な会話によって言語が変化するようすが観察され,数理モデルでは見られない現象が発見された.その一方で,計算時間等の問題にも言及し,これらのモデルを実装するうえでのメリット,デメリットを示した.
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