2010 Fiscal Year Annual Research Report
言語進化論的アプローチによる文法形成過程のモデル化
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20700239
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
中村 誠 北陸先端科学技術大学院大学, 情報科学研究科, 助教 (50377438)
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Keywords | 進化言語学 / エージェント / モデル化 |
Research Abstract |
本研究は,自然言語の文法的特徴である語形変化が言語使用者間のコミュニケーションによって動的に形成される過程をマルチエージェントモデルによって再現し,構文発達との関連を示す定量的なモデルの構築を目的とする.一般に,このような語形変化は構文を理解する上で補助となり,言語理解に役立つといわれている.本研究はこのような文法構造の発達の解明を目指す. エージェントモデルに関しては,昨年度に引き続いて認知バイアスを持ったエージェントの文法獲得と文法の通時的な変化を調査した.これにより,単語の獲得に役立つといわれているバイアスが,構文獲得にも有効に作用することを示した.大規模コーパスを用いた言語処理の応用として,新語義発見に向けた語義識別の研究を行った.多義性のある対象単語をコーパスからいくつか取り上げ,それらの語義を辞書から推定した.この研究をさらに発展させ,通時的なコーパスを利用することで,語義の変化を追跡調査することが期待される.また,文法構造の発達の応用例として,法令文を対象とした調査を行った.法令文は独特の表現や文法構造を持っており,これが構文の曖昧性を解消するのに役立っている.このような表現の多様性について日本,ベトナム,米国の法令文を比較し,各国の立法環境と文法構造に関する考察を行った.以上のように,基礎的なモデルを用いたシミュレーションだけではなく,コーパスの分析による複数言語の文法構造の比較等,現実にある言語資源を用いた実験を行った.
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