2008 Fiscal Year Annual Research Report
古典・量子相関をもつ系での微分幾何に基づいたベイズ予測理論の研究
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20700250
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 冬彦 The University of Tokyo, 大学院・情報理工学系研究科, 助教 (90456161)
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Keywords | 時系列解析 / 情報幾何 / 量子情報 |
Research Abstract |
H20年度の研究は、4年間に渡る研究の初年度のため、全体の方向性も確認しつつ研究をすすめた。 1. AR過程の優調和事前分布に基づいたベイズ予測の手法については、3次以上のAR過程での数値実験を行った。ただし、研究計画で指摘したように、棄却法のような単純な方法では非常に効率が悪く、偏相関によるパラメータ表示を利用して行うことが極めて有効であることが示された。最新の計算機を準備して数値実験を行ってみたところ、10程度のデータでは、2次のAR過程と同様の結果が確認できた。一方、偏相関係数をパラメータにとると解析的にも扱いやすくなることが示された。特に優調和事前分布は簡便な形になる。これまでは、AR過程の無情報事前分布として一様分布以外にreference事前分布が提案されていたが数値的に求めるため扱いづらい。我々の提案する優調和事前分布はベイズ統計の観点からも非常に意義深い発見である。なお、微分幾何では、元のARパラメータではなく、偏相関係数を利用することは多様体に対して異なる座標系を用いることに相当する。 2. 量子系のベイズ予測では、古典的な予測理論の拡張を念頭において進めた。許容性に関しては3モード以上のガウス状態族であればジェフリーズ事前分布に基づいた予測は許容的でないことが示された。つまり、一様にリスクを小さくするような性能のよい予測密度作用素が存在する。また、ミニマックス性については、純粋状態のモデルの場合に検出確率に注目することで古典ベイズ予測の結果を拡張できることが示された。これらの応用的な意義、とくにエンタングルメント(量子相関)との関係など、物理的意味付けを物理系の研究者と議論していくことが今後の課題である。
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